【印刷用レイアウト】

人生を切り拓くための一日の考え方(後編)

仕事をする上で「一日を有意義に過ごす」ために、絶対に欠かせない要素、それは集中力です。

私は「集中力=体調管理」と考えています。皆さんにも心当たりがあると思いますが、集中力が上手く発揮できない時は、体調管理が疎かになり疲労がたまっていることが多いものです。

プロフェッショナルマネージャー(プレジデント社)

体調管理を具体的にどう行っていくかは、人それぞれスタイルが違いますが、私の場合は睡眠時間の管理がポイントになります。

私はいまだに子どものようなところがあり、一日7時間は寝ないと気分も体調も優れません。だから睡眠時間が重要なのです。この睡眠時間の確保にさえ気を配っていれば、日中は集中力が持続し、そのおかげで残業をせずに毎日帰ることが出来ます。 でも、これはあくまでも私のやり方です。あなたの体調管理にとって影響が大きいのは、睡眠なのか?食事なのか?それともストレス解消なのか?を 自分自身で把握し、安定した集中力を発揮できるよう自己管理をしてください。

逆に、集中力が低い人は残業が習慣化してしまうケースが多いようです。

昼間は冴えない表情をしていて、昼休みになると時間ギリギリまでおしゃべりに夢中。1時になる重い腰をやっとあげて「さぁ、やるか」ってなもんです。私から言わせると、そういう人は昼間は手を抜いているとしか思えません。これでは残業が日常化してしまうのもムリありませんね。

佐々木常夫さん

では、集中力さえ高ければ、残業をせずに定時に帰れるのか、と言うと、世の中そんな甘いもんじゃありません。私は今、東レ経営研究所の社長をしています。それだけでも仕事はたくさんあります。その他に、経団連の理事や内閣府の複数の審議会の委員も担当しているので、事前の準備や会合でかなりの時間を要します。さらに本の執筆や講演会でも多くの時間を割かれます(これは個人の時間を利用していますが、まぁ仕事のようなものですね)。メディアの取材対応は月に10本ペースです。

一般のビジネスマンより明らかに多くの仕事量を抱えているわけです。スケジュールは隙間なく埋まっていて、“時間単位”でなく“分”単位で仕事が入ってくることも少なくありません。ここまで仕事量が膨大だと、いくら「私は残業をせずに帰っている」と言ってもオフタイムを利用して仕事をこなしていそうですが、そんなことはありません。家に帰れば、好きな本や時には面白いドラマを見たり…毎日何時間もかけて家族との会話を楽しみながら晩酌をしています。たくさんの仕事を時間内にこなしつつも、こんなに余裕があるのは日々の集中力の発揮に加えて、様々な工夫をしているからなのです。

重要な仕事は全体のうち2割あるかないか、残りの8割は手を抜いても問題にならないような、どうでもよい仕事

とは言っても、これさえすれば仕事が効率的に進む、という魔法のような方法はありません。いくつもの工夫を組み合わせた結果、はじめて時間は生まれるものです。

その一つ目は「すき間時間」を最大限に活用することです。

私は、通勤中や移動中の電車でいねむりをしたことがありません。電車内では必ず仕事をしています。カバンの中には、案件別に整理した数種類のクリアファイルを入れています。座席につくとその中の一つを取り出し、周囲など気にせず仕事に集中します。移動時間が片道数十分ある場合は、行きで一つ、帰りで一つ仕事が終わっている計算です。出張中も全く同じです。こまめな乗り換えがない新幹線は、私にとって最高のオフィス空間です。

二つ目は、やらないで済むことは、やらないことを徹底することです。

私は「会議に出ない・人に会わない・書類を読まない」主義を貫いています。まぁ、これはやり方を間違えるとビジネスマンとしては、命とりになりかねませんから、安易に真似することはお薦めしませんが(笑)。

仕事にとりかかる前に必ず完成度何%かを決める

会議に出ない…私の経験で言えば出ても意味のない会議が全体のうち3割くらいあります。こういう無意味な会議には口実をつくって出席しないか、代理人を出します。意味のない会議にどうしても出席しなければならない場合、メモをとっているふりをして違う仕事をしています。

人に会わない…何でもかんでも打ち合わせをすれば良いというものではありません。「打ち合わせをしたい」「会って話がしたい」という依頼があっても本当にその人に会わないといけないのか、それは電話やメールでやりとりすれば済む用件ではないかと事前に検証します。その上で直接会うのを断るケースもよくあります。

書類は読まない…会社の資料なんて読まなくてもいいものがたくさんあります。そんなものに目を通しているうちに、貴重な時間はどんどん奪われていきます。もちろん、読まなくてはいけない資料はじっくり目を通す必要がありますが。そこらへんはきちんと吟味しなくてはなりませんね。

三つ目の工夫は、メールのやりとりです。メールは読むだけで時間がかかります。それに対しバカ丁寧に返事を書いていたら、いくら時間があっても足りません。私の場合は極端にメール文を簡略化し、こんにちわ、お元気ですか、などという冒頭の挨拶は一切省きます。内容は用件だけです。結論、それに補足の箇条書きくらいです。そういうメールを出していると、受け取る側も「佐々木さんはこういうタイプなんだな」と徐々に理解してくれて送られてくるメールもどんどん短くなっていき、さらにやりとりが効率的になります。私のスタイルに相手が合わせて変わってくるというわけです。まぁ中には、用件だけの短いメールでは不機嫌になる人もいますから、そういう人には丁寧な対応をしなくてはなりませんね。

佐々木常夫さん

私がここまでして時間を効率的に利用することを、なぜそこまで?と不思議に思う方もいるかもしれません。

根本のところで言うと、それは結局、自分がやりたいからやっているんです。昼食をさっと済まして、すぐに仕事にとりかかると「佐々木さん、昼休みくらいちゃんと休みましょうよ」と言われることもあるのですが、私は仕事をすることが何よりも楽しいんです。もう趣味みたいなもんです。仕事を仕事としてやっている人は、最終的には仕事が趣味な人にはかないません。仕事が趣味であれば、どこまでも集中してできるし、気分転換さえ必要ないんです。

では、なぜここまで仕事がなぜ楽しいのか。

それは仕事は形として残るからです。これは「俺が作った工場だ」「私が作ったシステムだ」など、たいていの仕事は形として残ります。

その仕事の楽しさは、課長…部長…と役職が上がれば上がるほど大きくなっていきました。私が平社員の時は「あの仕事は充実感あったなぁ」とプロジェクトが完結する度に思っていました。それが課長や部長になると、部下を使ってもっと多くの仕事を形にすることで、充実感が何倍にも大きくなりました。今は社長をしているわけですが「社長は苦労ばかりで大変だ」なんて、決まり文句のようにみんな口では言いますけど、あれは嘘ですよ。立場が上に行く方が楽しみが大きくなる、もちろん全てとは言えませんが、ほとんどの会社でこれはあてはまることだと思います。

  • 前編を読む